第64章 君は安定剤

ランティンビル――最上階の灯りは、丸一日つきっぱなしだった。

川西拓海が弁当箱を提げて社長室のドアを押し開けると、ちょうど佑奈が鉛筆一本で髪をざっくりとまとめているところだった。

額に落ちた数本の後れ毛が頬をかすめ、澄んだ瞳はパソコンの画面に釘づけ。真剣そのもの。

「……徹夜か?」

川西拓海は眉を寄せる。心配は隠しきれないのに、口のほうはきっちり小言を並べる。

「昨日、なんて言った。ラフを一枚描いたら帰って休むって約束しただろ。身体が資本だ」

佑奈は画面から目を離さない。隣で何を言われようと気にしていられなかった。頭の中の景色が消える前に、全部、形にしたい。

「締め切りまで、も...

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